スリランカのIT事情
平成12年7月14日
CICCシンガポール
1.スリランカの経済概況(スリランカ中央銀行年報)
人口:1904万人(1999年央中央銀行調査)
国土面積:65,610平方Km (北海道の8割程度)
GDP: 1兆1106億ルピー(約157億米ドル)
一人当たりGDP: 829米ドル
経済成長率(1999年):4.3%
コロンボ諸費者物価上昇率(1999年):4.7%
失業率(1999年):8.8%
2.コンピュータ導入の略史
スリランカのコンピュータ導入は、1960年代半ばのIBM製パンチカードシステムの導入から始まる。1969年には、国営技術公社(State Engineering Corporation)へICL1901が導入された。また、IBM製コンピュータが、1969年に、保険会社(Insurance Corporation)及び石油会社(Petroleum Corporation)へ1970年には、センサス・統計局に導入された。
国営技術公社及びセンサス・統計局のコンピュータは、一部時間が大学での学習に開放され、大学でのコンピュータ学習が開始された。
1971年にはPeradeniya大学にIBM1130が設置され、1972年にはMoratuwa大学に設置された。NIBM では、1979年にWangコンピュータを利用して、国内最初のコンピュータ・システム・設計のDiplomaコースを開設した。
コロンボ大学では、1973年にIBMコンピュータを、1981年にはData General Miniを導入した。このコンピュータは、1980年代初めの通信ネットワーク計画作りに活用された。
1970年代後半は、ミニ・コンピュータがコロンボにも登場した時代であった。1983年までには、コロンボ大学ではミニ・コンピュータの活用と研究部のネットワーク化が図られた。
その後、英国からの援助プログラムの下に多くのコンピュータが大学に設置された。1980年代初めの日本からの最初の援助がPeradeniya大学工学部になされ、供与機材が同大学のコンピュータラボとして活用された。
このように、スリランカのコンピュータ導入は、政府部門を中心に開始された。
3.スリランカの情報技術政策の現状
1984年には、大統領への諮問委員会(委員長:Prof. Moonesinghe)がとりまとめた "National Computer Policy for Sri Lanka"が承認された。この政策提言に基づき、CINTEC(Computer and Information Technology Council of Sri Lanka)が設立された。
1996年には、すべてのIT関係主要省庁が参加よるラウンド・テーブルがCINTEC主催で開催された。政策提案の内、コンピュータ機器への関税撤去、1998年をIT年とすることなどが実現している。
CINTECにおいて国家情報技術計画を策定中であり、第一次案が完成し、科学技術省に提出されている。同計画案の項目は、行政の情報化、通信整備、情報技術産業育成、法的整備、観光振興、農業振興、健康・厚生、統計整備、金融コンピュータ・システム整備、EDI/電子商業取引(IT関連法律整備、e-security、インターネット・教育)等からなって いる。コンピュータ教育については、初等教育での情報技術教育、大学での情報技術教育、教師の研修、標準などが記載されている。特に、インターネット、JAVA、マルチメヂィア、ネットワークなどの産業界が緊喫に必要としている技術者育成を重視している。
工業開発省においても、産業開発マスタープランが検討されている。
4.スリランカのコンピュータ・ソフトウエア産業の状況について
(1) 概況
スリランカのソフトウエア産業の従業員数は、3600名程度。国内での年間売上は、15百万米ドル程度と推定される。国内向け市場は、通信関係、銀行関係、政府システム等が中心であり、停滞している。IT学部卒業生の25%程度が、米国、豪州、ドイツなどの海外へ流出している。海外向けの業務が大きく、あらゆるレベルのIT人材の確保が困難となっている。
(2) コンピュータ・ベンダー協会会長、ソフトウエア産業協会の概要
(i) コンピュータ・ベンダー協会
メンバーは32社。大手企業は、従業員300名程度。1社平均の従業員数は、50名程度。メンバー以外の企業は、小規模なところが、10社程度。
(ii)ソフトウエア産業協会
メンバーは40社。大手企業は、従業員300名程度。メンバー以外は小規模企業が10から15社。
(3)産業界の状況
海外の市場(米国、豪州、ドイツ)向けの仕事が多い。人材の海外派遣が中心。高級プログラマを派遣すると、一人一日当たり220米ドルの収入がある。
(4) 主な大型コンピュータプロジェクト
国内の大型プロジェクト開発は、移民局コンピュータシステム、銀行システム、携帯電話料金請求システム、自動車登録システムなど。
(5) IT技術者の状況
あらゆるレベルのIT技術者が大幅に不足している。需要の大半は、海外。
給与は次のとおり。高級プログラマ(Oracle専門家など):月額35,000ルピア(US$470,75Rps/US$1)、高級マネジャークラス:月額80,000から90,000ルピア(US$1070-1200)、マネジャークラス:月額50,000から60,000ルピア(US$670-800)。
(6) IT技術者教育
大学の卒業生は、そのままでは、実戦で役に立たない。
ICTやインフォマチィックスの卒業生は、すぐに実戦で役立つので非常に良い。
大学卒業生がそのままでは職が無いので、さらにICTに入学したりしている。
ICTの卒業生は年間約150人、インフォマチックスの卒業生は年間120人程度。
5.通信分野の規制緩和
通信分野での民間企業の登場は、1994年の携帯電話事業である。競争の出現により、価格が低下している。最初の国際データ通信事業は、DATANET(Singapore Telecomとの共同プロジェクト)が開始した。
1997年には、無線ループ事業者が2社認可され、NTTがスリランカ・テレコムに資本参加した。1997年時点で、8社のISP、4社の携帯電話事業者、2社のWLL事業者が存在する。
6. スリランカの情報技術教育の状況
(1)情報技術初中等教育の経緯
1980年代後半にケラニア大学がBBC (British Broadcasting Cooperation)の協力の下に実施されたコンピュータ・リテラシー・プログラムが大きな影響を与えた。1983年には教育省がいくつかの学校でGCE A/Lコースを開始し、その後、コロンボ大学、モラトワ大学、ぺラデア大学の協力の下に多くの学校へ拡張された。
学生のコンピュータ技術レベルを認定するため、CINTECと教育省はコンピュータ教育の国家試験(NECS: National Examination
in Computer Studies)とコンピュータ応用技術国家認定制度(NCCA: National Certificate in Computer Application)をそれぞれ開始した。
1990年までには、スリランカ・コンピュータ協会(CSSL: Computer Society of
Sri Lanka)は学校間のソフトウエア競技を開始し、代表者を東南アジアコンピュータ連盟(SEARCC: South East Regional Computer Confederation)のソフトウエア競技会に派遣している。
CINTECでは、1992年以来、IOI (International Olympiad in Informatics)に学生を送っている。
(2)高等情報技術教育の経緯
1968年、コロンボ大学の数学学科では、統計分野での拡張コースの開設とそれによる収入の使用を上院に認可された。これにより、統計部門が設立され、統計分野におけるコンサルタント及び研修業務を開始した。ぺラデニア大学工学部でも1960年代後半にコンピュータ教育を開始した。モラトワ大学(当時、カツベダ・キャンパス)及びVidyodaya大学では、1972年にコンピュータ教育を開始した。
1987年から1990年の間、日本JICAの協力によるICTプロジェクトが実施された。
1985年から1996年の間、UNESCOの4th Country
Program の下に、コロンボ大学においてコンピュータ科学のマスターコースが英国カーヂィフのウエールス大学の協力により実施され、30名以上が卒業し、現在のスリランカのIT分野の中核となっている。
同様の4th Country Program の下にモラトワ大学においては、CAD/CAMプロジェクトが実施された。
1992年には、ICTにおいていくつかのCertificateコースが開始されている。
産業界のニーズに応える実戦的なIT高等教育を行っているのは、公的部門ではICT(Institute of Computer Technology)、民間部門ではInformaticsが存在する。
(3)スリランカの情報技術高等教育の状況
(i)
概況
スリランカの大学は13校である。大学教員数は3200人。全学生数は4万人。
コンピュータ科学関係の学部がある主要大学は、コロンボ大学、モロトワ大学、カラニア大学、ペラヂィニア大学。
全国で、工学部系の卒業生は毎年400〜500名。コンピュータ科学の卒業生は毎年約200〜300名。特にコンピュータ科学の卒業生は、就職状況は良いが、他の学部は卒業しても職があまりない状況。コンピュータ科学学部の卒業生の初任給は、月額25000ルピア。
大学教育は、3年コースは一般学位、さらに1年追加コースは特別学位となっている。
表. 主要大学の入学生数及びコンピュータ関連学部への入学生数(1997/98)
|
大学名 |
物理・コンピュータ学部入学生数 |
工学部入学生数 |
入学生数合計 |
|
University of Colombo |
256(50) |
- |
1564 |
|
University of Peradeniya |
259(-) |
305 |
1907 |
|
University of Sri Jayawardenepura |
121(-) |
- |
1665 |
|
University of Kelaniya |
253(-) |
- |
1438 |
|
University of Moratuwa |
-(-) |
382 |
548 |
|
全大学 |
1282 |
695 |
11658 |
出所:"Sri Lanka Universities Year Book 1999/2000" by University Grants Commission
( )内は、1998/99のコンピュータ科学のみの入学予定数。
産業界のニーズに応える実戦的なIT高等教育を行っているのは、公的部門ではICT(Institute of Computer Technology)、民間部門ではInformaticsが存在する。実際に役立つ戦力としての卒業生は、年間300名程度と考えられる。
(ii)
ICTについて
1987年から1990年の間、日本JICAの協力により実施されたICTプロジェクトが母体となって、1987年に創設されたもの。同協力プロジェクトは成功裏に完了し、1991年9月にスリランカ側に引き渡された。
現在、コロンボ大学の敷地内の4階建ての建屋内にある。同建屋は、現在、コロンボ大学の統計・コンピュータ科学学科(DSCS: Department of Statistics and Computer Science)と同居している。2000年末完成予定の新校舎が隣接する土地に建設中であり、このビルが完成した後には、DSCSが新校舎に移転する予定である。
ICTのコース及び生徒数の概要は次図のとおり。
表. ICTの研修コースと入学生徒数
|
Course Name |
2000年の入学生数 |
|
Post graduate Diploma in CT (1 year, full time) |
40 |
|
Post Graduate Diploma in CT (2 year, part time) |
40 |
|
Certificate Course in the Use of Information Technology for Development |
80 |
|
Certificate Course in Software Design and Development |
30 |
|
Graduate Training Programme in IT(4ケ月) |
200 |
* CT: Computer Technology
Graduate Training Course(4カ月コース)は、大学卒業生を対象にさらに情報技術の研修を実施するものである。
また、コロンボ大学のDSCSとともに、Computing Services Centre(CSC)を1990年に設置し、独立採算で運営している。コンピュータ・システムのコンサルテーションを有料で実施している。1人月の業務で10万ルピー。研修実施は、1日1000ルピー、1時間では300ルピーの料金をとっている。民間の同種のサービスより約半額の料金である。CSCの事業規模は、年間1000万ルピア程度。
表. CSC部門の研修人数
|
Course Name |
2000年の入学生数 |
|
Specialized Course |
400 |
|
Awareness courses |
200 |
近々の内にオープン大学のコース(External Degree of Bachelor of Information technology、3年制)を開始する予定であり、応募者を募集したところ、応募者が6000人に達している。
(iii) コロンボ大学について
a) 概要
1870年に、セイロン・メヂィカル・カレッジとして設立。
学生数は約6000人。
b) 統計コンピュータ科学学部(DSCS: Department of Statistics and Computer Science)
1985年に設置された。DSCS学部では、コンピュータ科学に関する特別学位及びマスターコースを中心に活動している。
表. DSCS学部入学生数の推移
|
Batch No. |
Year |
入学生数 |
|
1 |
85/86 |
22 |
|
2 |
86/87 |
22 |
|
3 |
87/88 |
29 |
|
4 |
88/89 |
25 |
|
5 |
89/90 |
26 |
|
6 |
90/91 |
22 |
|
7 |
91/92 |
17 |
|
8 |
92/93 |
29 |
|
9 |
93/94 |
30 |
|
10 |
94/95 |
26 |
|
11 |
95/96 |
30 |
|
12 |
96/97 |
30 |
(以上)