1999.08.14. TK/BKPM

(Rev.1999.08.25)

 

インドネシア:スハルト政権崩壊後の投資政策(参考メモ)

 

JICA派遣専門家 菊 池 剛

派遣先:投資調整庁(BKPM)

 

0.はじめに

インドネシアは、1997年7月のタイのバーツ切り下げに端を発するアジアの経済危機を諸に受け、その状況はアセアン諸国の中で最も深刻であった。この危機打開の為には、古い経済体質の改善が必要であり、IMFなどの勧告もあり、インドネシアは経済の自由化や投資に関する規制緩和に着手することとなった。

スハルト政権崩壊以前においても、一般輸入業務の自由化(1998年3月)、卸売り・小売りなど流通分野の外資への開放(1998年4月)などが発表されたが、より積極的に、投資政策に関わる規制緩和が進められたのは、1998年5月21日のスハルト政権崩壊以降である。

本メモは、スハルト政権崩壊後に、如何なる投資政策や規制緩和が打出されたか、また、現在、投資調整庁(BKPM)を中心に如何なる課題が検討されているかについて、知り得る範囲の状況をまとめたものである。

 

1.1998年5月以前の主な動き

スハルト政権が崩壊する1998年5月以前の、投資に関連する主な動きを、時間を追って見ると以下の通りである。 

1967年 『外国投資法』発効

1968年 『内国投資法』発効

1994年 特定業種を除き外資100%認められる(政令NO.20/1994)

1995年 『小企業に関する法』発効(法NO.9/1995)

1996年 『特定産業に対する免税措置(タックス・ホリデー)』(政令NO.45/1996)

1997年7月 タイの経済危機勃発、 インドネシアに飛び火

1998年3月 第7次スハルト内閣発足、第7次開発5か年計画スタート

1998年3月 一般輸入業務への外資参入解禁(1998年3月31日付、政令NO.16/1998)

1998年4月 卸売業への外資参入解禁(1998年4月30日付、投資大臣/投資調整庁長官令NO.11/SK/1998)

       小売業への外資参入解禁(1998年4月30日付、投資大臣/投資調整庁長官令NO.12/SK/1998)

これら法令により、卸売り・小売り業への外資参入が51%まで認められたが、その後発表された1998年7月14日付け大統領令NO.99/1998との整合性が問題となり、1998年9月29日付け投資大臣/ 投資調整庁長官令NO.29/SK/1998により、NO.11/SK/1998 及びNO.12/SK/1998が撤回された。この結果、卸売り・小売り業それぞれへの100%外資参入が認められることとなった。但し、後述するように、小企業との提携が条件付けられている。

1998年5月12日 トリサクティ大学事件(学生6名死亡)

1998年5月21日 スハルト辞任。ハビビ、大統領に就任。(=スハルト政権崩壊)

1998年5月22日 ハビビ内閣発足(投資担当大臣兼BKPM長官Mr.Hamzah Haz、野党“開発統一党=PPP”より入閣)

 

2.1998年5月以降投資政策に関する変化の特徴

スハルト政権崩壊後の大きな変化の特徴は、次の二点に絞られる。

(1)投資の自由化・規制緩和がより積極的に推進された。

特に、流通分野・サービス分野において。

(2) 投資許認可システムが改善され、諸申請手続きの簡素化・迅速化・透明化が進んだ。

・ 諸申請手続きが、大統領からBKPM長官へ、またBKPMからBKPMD(地方局)

への権限委譲。

・BKPMのワン・ストップ・サービスの強化。

・BKPMの許認可証発行の迅速化。

・タックス・ホリデーの審査基準の透明化。

 以上についての具体的な政策の変化・規制緩和については、次項参照されたい。

 

3.スハルト政権崩壊後に発表された投資政策・規制緩和

(1) 投資に関する改革方針(1998年5月29日)(別添A参照)

Hamza投資大臣/投資調整庁(BKPM)長官より発表。

@ 権限委譲:大統領からBKPM長官へ(外国投資額1億ドル以下)

BKPM本部からBKPMDへ(内国投資額100億ルピア以下)

A 許認可手続き:簡略化(ワン・ストップ・サービスの強化)

迅速化(許認可に要する日数の大幅短縮)

(2) 新ネガティブ・リスト(投資規制業種)(1998年7月2日、大統領令NO.96/1998)(別添B参照)

本大統領令は、3年前の1995年に発表されたネガティブ・リストを改定したものである。投資規制業種は、次ののふたつのカテゴリーに分かれている。

@ 内資・外資いずれにも投資が認められない業種

A 内資のみに投資が認められる業種(外資参入が認められない業種)

従って、これら@およびAに含まれない業種は、原則的に外資に開放されている。

インフラ関連業務は、新ネガティブ・リストから除かれたが、業種によって異なるが、参入の条件が緩やかになったと言うことであって、100%外資への開放となった訳ではない。

新ネガティブ・リストに関連して、『投資申請案件審査マニュアル』(1998年7月30日付け、投資省・投資調整庁編s)が作成されている。本マニュアルは、BKPM職員用に作成されたものであるが、外部にもオープンにされている。尚、BKPMに派遣されている外国人アドバイザー(カナダ、フランス、イタリア、日本)が経費を分担して、英訳版を作成した。また、仮訳ではあるが、日本語翻訳版もある。

(3) 小企業保護の為の投資規制業種(1998年7月14日、大統領令NO.99/1998)

(別添C参照)

本大統領令は、小企業保護・振興の為に、大中企業の参入を規制したものである。

投資規制業種は、次のふたつのカテゴリーに分かれている。

@ 小企業のみ参入が認められる業種

A 小企業と提携すれば大中企業の参入が認めれる業種

 

※ 小企業とは、純資産2億ルピア以下(但し、土地・建物を除く)或いは年間売上げ10億ルピア以下の企業である。(『小企業に関する法』参照)

※ 提携の形態としては、プラズマ・コア、代理店、下請、フランチャイズ、一般取引き、最小限20%の株式所有などの種類があり、どの形態をとるかは、投資企業に任せられている。(『小企業に関する法』参照)

 

(4) 投資調整庁(BKPM)の地位・業務・機能および組織に関する大統領令(1998年7月28日付NO.114/1998) 

(5) 投資手続きに関する大統領令(1998年7月28日付NO.115/1998)

(6) 投資手続きに関するマニュアル(1998年10月20日、投資大臣・投資調整庁長官令NO.30/SK/1998)

本マニュアルは、(1)に掲げた『投資に関する改革方針(1998年5月29日)』を法令化したものである。新規の投資申請・諸変更申請について、手続き要領、必要日数、諸申請様式などが説明されている。本マニュアルの英語版が、市販されている。

また、日本人コンサルタントによる日本語翻訳版もある。

(7) 『特定産業に対する免税措置(タックス・ホリデー)に関する審査基準』の発表(1999年1月14日、大統領令NO.7/1999)

本審査基準は、1996年の大統領令NO.45/1996では、不透明であった審査基準を明確にしたものである。(別添D参照)

(8) 持株会社設立に関する規制緩和(投資大臣/投資調整庁(BKPM)長官令(1999年6月8日、NO.12/SK/1999)

本法令により、外国企業・外国人・インドネシア法人は、企業への資本参加を行う

  ことを目的とした持株会社を設立することができるようになった。

4.近く発表予定の投資関連法令・規制緩和

以下については、既に新聞などにより一部報道されているが、BKPM内部で幹部クラスから確認したものである。

(1) 在外公館に投資承認の権限を委譲する。

大統領令により、インドネシアの在外大使館が投資申請受付をする権限を与えられる。まず、日本、韓国、香港の3カ国から始められる予定である。

(2) BKPMDに外国投資承認の権限を委譲する。

昨年5月に発表された『投資に関する改革方針』において、100億ルピア以下の内国投資については、各州にある投資調整庁支局(BKPMD)が申請受付する権限が与えられているが、外国投資についても権限委譲する予定である。

※ (1)および(2)のいずれについても、BKPM(ジャカルタ)に直接申請してもよく、

どこを通じて申請するかは、申請者の選択に任せられている。

(3) 1億米ドル以上の外国投資についても、承認権限をBKPM長官に委譲する。

昨年5月に発表された『投資に関する改革方針』において、1億米ドル以上の外資の

承認は、大統領の権限になっている。

(4) 新しい『投資法』を制定する。

現在、『内国投資法』と『外国投資法』に分けられているが、これを一本化する。

本ドラフトは既に作成済みと言われている。

5.若干のコメント=結びにかえて

以上、スハルト政権崩壊後の投資政策の変化や規制緩和の状況を述べてきたが、果たして実施面ではどうか。知り得る範囲で列挙すると以下の通りである。

(1) 政策或いは規制緩和通り実施しているものもあれば、実施されていないものもある。

例えば、実施されているものとしては、

@ 1億ドル以下の外国投資案件については、BKPM長官が承認を与えている。(以前は、投資額に関係なく、外国投資案件はすべて大統領の承認事項であった)

諸申請手続きについては、申請書類が不備でない限り10ワーキング・デー以 内(大統領の承認を必要とする投資額1億ドル以上の新規申請は、20ワ―キング・デー以内)が守られている。(以前は、新規の投資案件は、6週間以内に許認可を与えることが原則であったが、実際は、数ヶ月、半年或いはひどい場合

は1年以上を要したケースがあると聞いている)

 

実施されていないものとしては、

@ 100億ルピア以下の国内投資については、BKPMD(地方局)が許認可を与えることが発表されているが、実際は殆ど実施されていない。問題は、地方の実務能力が伴っていないことが指摘されている。

(2) 一方では規制緩和しているが、他方では条件を付け、それが投資促進のブレーキになっている面もある。

例えば、卸売り・小売り業は、外資100%参入の可能であるが、3の(3)で述べたようなインドネシアの小企業との提携が条件付けられている。この為、日本の多くの商社は、輸出入ライセンスのみ取得しているところが多い。しかし、最近、その条 件 を受け入れてでも、卸売り業のライセンスを取得しようと検討を始めたところもある。

長い間、一般輸入業務への外資参入が認められず、日本の商社の活動は、輸出業務のみで、言わば“片肺飛行”を余儀なくされていたが、現在では殆どの商社が一般輸入ライセンスを取得している。しかし、一般輸入品は注文ベースであることが求められており、先の市況を睨んだ自由な輸入ができないようになっている。この点、卸売り業は、注文ベースであるか否かは問わないので、最近、日本の大手商社は、輸出入ライセンスのみでは商社機能が充分発揮できない、卸売り業のライセンスも必要と考え、小企業との提携を検討し始めている。

(3) 地方(BKPMD)の実務能力が伴っていない

将来、BKPMDにおいても、外国投資の申請案件に許認可を与えることが検討され、BKPMによる各地でのオリエンテーションも実施されているが、果たして実務能力が伴うか、極めて疑問である。

例えば、西スマトラのBKPMDには約50人のスタッフがいるが、英語を理解できるのは、チェアマン(支局長)のみと言う。これで果たして、外国投資案件の申請を受け付けられるか、甚だ心細い限りである。

以 上

 [別添] A~Dについては、『インドネシアへの投資案内(BKPM/JICA編集)』参照。

[備 考] 本メモは、投資政策や規制緩和、或いはBKPMを中心とする今後の動きや状

況に応じて、改定していく考えである。また、以上のメモについて、疑問・

質問・コメント等あれば、聞かせて頂ければ幸いである。

(連絡先)投資調整庁=BKPM内、JICAアドバイザー・オフィス:

電話 520‐2052/3 FAX 527‐4854

 

 

 

 

 

 

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