ミャンマーでのコンピュータ科学教育の歴史は、ラングーン大学コンピュータセンター(UCC) が設立された1971年にスタートした。大学院コースであるM.Sc.(Master of Computer Science) 及びD.C.Sc.(Diploma in Computer Science)クラスは、1973年に開校された。しかしながら、入学生は非常に限られた人数であった。1986年には、学部コースであるB.C.Sc. とB.C.Tech. が導入された。1988年まで、入学生は毎年90名の少数であった。
1996年10月に科学技術省が創設され、その下にYangon University of Computer Studies(YUCS) とMandalay University of Computer Studies(MUCS) が設立され、合計400 名の入学生が認められた。さらに、1998年には、YUCS及びMUCSにおいて、B.E.H.S.クラス卒業生に対し、アンダーグラデュエイト・ディプロマクラス(Dip.CS 及びDip. CM)が開校され、両校の入学生数は毎年合計800 名まで認められるようになった。そのようなディプロマクラスは、2001年までに5000人のアンダーグラデュエイト・ディプロマ研修生を育てるとの目標の下、今後、多くの都市、地方で開校されることとなろう。また、ミャンマー政府では、民間コンピュータセンターの運営を認可して来ており、そこでは、ソフトウエア・アプリケーション及び国際ディプロマ・コースが実施されている。民間センターでは、毎年3000人の資格保有者を卒業させている。
1996年には、国家の指導の下に国家レベルのプロジェクトがスタートした。そのプロジェクトによって、数多くのコンピュータが購入され、コンピュータ技術を基礎教育生徒に普及するとの観点から、学校に設置された。これは、まさに将来を見据えた新しい世代のための施策である。
ミャンマーでコンピュータ関係の学位を授与する代表的高等教育機関はヤンゴンにあるYUCSである。同校はもともとラングーン大学(現ヤンゴン大学)のコンピュータ・センター(
UCC: Universities Computer Centre)として1970年に発足したものだ。UNDPの援助によりICL製の汎用機が導入され、これを契機として同大学数学科の中にコンピュータ科学の修士課程が創設された。その後もいくつかのコースが追加され、また1988年には現在の独立した工科大学であるICSTとなり今日に至っている。1993年にはイギリスのNational Computing Centre Ltd(NCC)との協力のもとで国際的な通用性のある学位としてInternational Diploma in Computer Science(I.D.C.S.)コースも創設された。これら全てのコースを合計した創立以来の延べ卒業生数は96年時点で約1000人を超える。政府や民間のコンピュータ部門で働く中堅以上の人材はほとんどがここの卒業生である。現時点での年間の卒業生数は学部レベル(5年間教育)で45人、修士レベルで10人程度、Post-Graduat Doplomaで70人程度となっている。なお同校は従来教育省の監督下にあったが、1997年1月からは新設の科学技術省の監督下に移管された。
表2 ICST(現YUCS)のコース別累積卒業生数
| 授与学位名 |
累積卒業生数 |
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Bachelor of Computer Science (B.C.Sc.) |
102人 |
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Bachelor of Computer Technology (B.C.Tech.) |
38人 |
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Master of Computer Science (M.C.Sc.) |
133人 |
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Post-graduate Diploma in Computer Science (D.C.Sc.) |
479人 |
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International Diploma in Computer Science (I.D.C.S.) |
340人 |

ICSTのコンピュータ・ルーム。合計200台余のPCがある。
(
3)民間のコンピュータ教育機関歴史は新しいが、民間コンピュータ教育機関もミャンマーの人材育成に当たって大きな役割を果たすようになってきている。ミャンマーのコンピュータ専門誌
"Computer Journal"の調査によれば、現在ヤンゴン市内だけでも65校のコンピュータ学校がある。これらの半分以上は設置するコンピュータ台数が10台以下という小規模のものであるが、設置台数が50台を超える規模のものも3校あり、これらは国内各都市に校舎を有し、また教育水準の点でも、ICSTと同様イギリスのNCCとの協力によって国際的な通用性のあるIDCS(あるいはその更に上位の資格であるHDCS)コースを設けるなどICSTに比べても遜色のないコンピュータ教育を行っている。こうした民間教育機関の教師陣の多くはICSTやヤンゴン工科大学の卒業生である。こうした民間教育機関の中で最大のものは
U Thaung Tin氏の運営するKMDであり、全国に11ヵ所の教室を持ち、合計のPC保有台数が430台。パートタイムベースでの受講生が毎月約1、000人、1年間の受講を必要とするディプロマ・コースの受講生が約300人という規模である(いずれも訪問時点である97年1月現在の数値)。一方これらの受講料は、上記
KMDの場合について見ると、パートタイムベースのコースが延べ100時間のコース料金として4、000チャット(約25米ドル)、1年間のディプロマ・コースの料金が4万チャット(約250米ドル。この他NCC準拠の試験受験のためには受験料として別途250米ドルが必要)であり、単純労働者の月収が千チャット前後であることを考えればかなり高いものであるが、その人気は上昇する一方のようだ。受講者はヤンゴン市内だけでも合計で毎月6000人に達すると推定されており、その平均像は学生(60%)、就職予備軍(10%)、政府/企業からの研修派遣スタッフ(30%)といったところのようだ。
表3 民間コンピュータ教育機関の累積卒業生数
(1996年末)| 授与学位名 |
累積卒業生数 |
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Bachelor of Computer Science (B.C.Sc.) |
45人 |
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Master of Computer Science (M.C.Sc.) |
10人 |
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Post-graduate Diploma in Computer Science (D.C.Sc.) |
70人 |
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International Diploma in Computer Science (I.D.C.S.) |
225人 |
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BASIC |
24、000人 |
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Windows |
36、000人 |
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Graphic |
300人 |
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Programming |
1、000人 |
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Hardware |
3、600人 |
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Network |
800人 |
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System |
5、400人 |
|
CAD |
500人 |

民間コンピュータ・スクール最大手のKMDヤンゴン本部の教室風景。
全国に11ヵ所の教室を持ち、パソコン430台を保有する。
毎月約千人が受講している。
(
4)初等・中等教育課程へのコンピュータ導入ミャンマーにおいて特徴的なのは初等・中東教育課程へのコンピュータ導入が極めて積極的に進められていることである。ヒューマン・インターフェースの簡便性という観点から導入機種としては
Appleが選ばれており、1995年末には一挙に3000台が購入され、全国の学校に設置された。マンダレー市内のCham Aye Dha Zen地区にある同区第7小中学校では、独自に開発したカリキュラムに従い、全ての中学生が毎日1時間(週6時間)づつ1.5ヵ月間にわたり、延べ40時間の実習を行っているとのことであった。長期的な目標として生徒1000人当り4台のパソコン導入を進めるという計画であり、ミャンマーの生徒数は小学生が540万人、中学生が150万人、高校生が40万人であるから、計画通りに導入されれば合計30万台が必要となる。
表4 ミャンマーの初等・中等教育
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82/83 87/88 92/93 93/94 94/95 95/96 |
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学校数(高校) (中学) (小学校) |
624 722 856 858 858 914 1,415 1,696 2,054 2,058 2,058 2,089 23,453 31,329 35,657 35,727 35,741 35,752 |
|
教師数(高校) (中学) (小学校) |
8,981 14,919 15,665 15,225 15,102 na 23,467 61,090 134,292 51,462 77,156 na 82,799 97,763 154,759 156,629 158,011 na |
|
生徒数(高校) (中学) (小学校) |
237 241 319 361 378 394 965 1,095 1,109 1,159 1,358 1,529 4,538 5,046 5,919 5,896 5,531 5,414 |
(出所)Central Statistical Organization, "Statistical Abstract 1996"

マンダレー市内の第七小学校兼中学校にてコンピュータ実習する生徒達。
年齢は12歳。一月半かけて述べ40時間の実習をする。
(5)
ミャンマーの高等教育機関(参考)ミャンマーには1996年現在2年制から7年制まで含めて合計40校の大学、高等教育機関がある。全て国立大学であり、これらに在籍する教官数は合計約6、000人、学生数は合計約34万人に達する。表9にこのうち主要なものの一覧を掲げる。
表5 ミャンマーの主要な高等教育機関
| 大学名 |
所在地 |
設立年 |
教官数 |
学生数 |
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University of Yangon |
ヤンゴン |
1920年 |
2,060 |
47,131 |
|
Yangon Institute of Technology(YIT) |
ヤンゴン |
1964年 |
N/A |
N/A |
|
Institute of Medicine |
ヤンゴン |
1964年 |
N/A |
N/A |
|
Forign Language University |
ヤンゴン |
1984年 |
51 |
1,318 |
|
Institute of Economics |
ヤンゴン |
1964年 |
283 |
5,015 |
|
Institute of Education |
ヤンゴン |
1964年 |
N/A |
N/A |
|
Institute of Agriculture |
ヤンゴン |
1924年 |
105 |
1,161 |
|
Institute of Animal Husbandry |
ヤンゴン |
1957年 |
57 |
1,000 |
|
ICST |
ヤンゴン |
1988年 |
|
|
|
University of Mandalay |
マンダレー |
1925年 |
821 |
21,045 |
|
Mandalay Institute of Medicine |
マンダレー |
N/A |
N/A |
N/A |
|
Mandalay Institute of Technology(MIT) |
マンダレー |
N/A |
N/A |
N/A |
|
Mawlamyine University |
モーレミャイン |
1953年 |
305 |
11,500 |
(出所)The World of Learning 1996, 46th edition, Europe Publications Ltd.
ヤンゴン工科大学(
YUT、元YIT)はソ連の援助により1950年代後半に建設されたものであり、1964年に独立の工科大学となった。コンピュータ関係の学科はないが、エレクトロニクス関係の学科があり、同学科の卒業生もコンピュータ分野における重要な人材供給源となっている。またマンダレーではマンダレー工科大学(
MUT、元MIT)があり、同校は北部諸州の学生を対象としており、やはりコンピュータ関係の学科はない。これらの高等教育機関は全て教育省の管轄下にあったが、ヤンゴン工科大学(
YUT)、マンダレー工科大学(MUT)、ヤンゴンコンピュータ科学技術大学(MUCS)及びマンダレーコンピュータ科学技術大学(MUCS)の4校は97年1月より科学技術省の管轄下に移管されることになった。
表6 ミャンマーの高等教育
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82/83 |
87/88 |
92/93 |
93/94 |
94/95 |
95/96 |
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学校数 (Universities) (Degree Colleges) (2-Year Colleges) |
10 4 14 |
10 6 11 |
22 7 10 |
23 7 10 |
23 7 10 |
23 7 10 |
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教官数 (Professional Institutes) (Non-professional Inst.) |
1,537 1,888 |
1,536 5,251 |
1,551 4,345 |
1,496 4,569 |
1,634 4,518 |
1,696 4,850 |
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学生数 (Professional Institutes) (Non-professional Inst.) |
15,149 47,527 |
17,629 112,327 |
17,406 227,716 |
18,858 216,386 |
19,352 229,018 |
20,909 317,955 |
(出所)Central Statistical Organization, "Statistical Abstract 1996"