JETRO/CICC シンガポール・ニュース・ウイークリー

(20000925- 20000930)

-南・東アジアにおける経済・社会・情報技術の今週の動き (139)-

                                                      発行日: 2000.10.02

                                                      JETRO/CICCシンガポール

                                                          小紫

 

 今週は「アジアの電子商業取引の状況」について、取りまとめましたので、ご参考までに巻末に添付させていただきます。

これまでのCICCシンガポールのニュース・ウイークリーや報告書は、ホーム・ページ(http://www.cicc.org.sg)に掲載しております。

[今週の話題]

アジアの情報技術(IT)分野では、IT人材確保、通信の自由化、電子商取引の普及の面での動きが激しい。このたび、アジアの電子商取引の状況についてとりまとめました。

電子商取引の振興のための政策枠組みについては、マレーシア、シンガポール、韓国、香港、インドが法令の整備を完成し、日本も遅ればせながら、「コンピュータ不正アクセス防止法」(1999)、「電子署名及び認証業務に関する法律」(2000)の整備により追いつたところです。19999月に事業開始した東南アジアの代表的B2B企業であるセサミ・ドット・コム社は、事業開始1年で月商5.5億シンガポール・ドル(約350億円)の取引を同社のセサミ・ネットを通じて実現するまでに急成長しています。また、電子署名認証企業もシンガポール、マレーシア、韓国、香港においてぞくぞくと設立が進んでいます。詳細は巻末の別添参照。

 

発展を続けるアジアの電子商取引市場

(財)国際情報化協力センターシンガポール事務所 小紫 正樹

 

アジアの情報技術(IT)分野では、IT人材確保、通信の自由化、電子商取引の普及の面での動きが激しい。このたび、アジアの電子商取引の状況についてとりまとめました。

電子商取引の振興のための政策枠組みについては、マレーシア、シンガポール、韓国、香港、インドが法令の整備を完成し、日本も遅ればせながら、「コンピュータ不正アクセス防止法」(1999)、「電子署名及び認証業務に関する法律」(2000)の整備により追いつたところです。19999月に事業開始した東南アジアの代表的B2B企業であるセサミ・ドット・コム社は、事業開始1年で月商5.5億シンガポール・ドル(約350億円)の取引を同社のセサミ・ネットを通じて実現するまでに急成長しています。また、電子署名認証企業もシンガポール、マレーシア、韓国、香港においてぞくぞくと設立が進んでいます。

 

1.アジアにおける電子商取引の将来

 

電子商取引関係の売上予想では、アジア各国とも大きく市場が拡大することを示している。2003年ないし2005年には、シンガポールで25億米ドル、韓国で17億米ドル、台湾で28億米ドル、の規模になることが予想されている。既存のEDI(Electronic Data Interchange)又は紙ベースの取引が電子商取引化していくものと考えられる。

表.アジア各国の電子商業取引の売上予想<単位:米ドル>

国 名

1998

1999

将来予想

タイ*1

-

42百万ドル

56百万ドル(2000年)

120百万ドル(2003年)

マレーシア*2

-

46百万ドル

10億米ドル(2003年)

シンガポール*3

7.5億米ドル

9億米ドル

25億米ドル

2003年)

インドネシア*4

1億ドル(2000年)

2億ドル(2001年)

5億ドル(2002年)

12億ドル(2003年)

インド*5

2.9百万ドル*5-1

1億ドル

*5-2

12億ドル(2003年)*8-3

100億ドル(2008年)*8-1

台湾*6

113百ル

28億ドル(2003

韓国

23.7百万ドル

17億ドル(2005年)*7

中国*8

8.1百万ドル

42百万ドル

 

出所:*1  タイISPクラブ

*2  エネルギー・通信マルチメヂィア省、*3 シンガポール統計局及び国家コンピュータ庁、*4 IDC*5-1  NASSCOM*5-2  インドKPMG調査会社、*5-3  IDC*6 IDC*7 Samsung Economic Research Institute *8 IDC

 

 さて、電子商取引においては、一般の消費者を対象とするB2CBusiness To Consumer)と企業間のB2B (Business To Business)に区分される。

アジアでは、B2B型の電子商取引の立ち上がりが早いと思われる。アジアでは、B2Bが中心になっていくのではないではないだろうか。

電子商取引では、当然、バイヤーとサプライヤーが存在し、これらの間をとりもつ機能として電子商取引企業が成立する。B2Cの場合にはバイヤーが一般の顧客に該当し、B2Bの場合にはバイヤーは大手の調達企業である。早期立ちあがりが可能なビジネスモデルは、大型のバイヤー中心型のB2Bネットワークである。次にB2B分野での2つのケース・スタディを見てみよう。

<ケーススタディ(1)>

典型的な例として東南アジアの代表的なSESAMi.com」社が参考になる。コラム参照。同社の特長は、シンガポール最大の企業であるシンガポール・テレコム社、シンガポール航空社及びEastman Chemical社をバイヤーとし、システム・インテグレーション企業、バイヤー自身、有力銀行、ロジ゙スチィクス企業などとの協力事業として、事業がスタートしていることである。19999月に事業開始して以来、わずか約1年で月商5.5億シンガポール・ドル(約350億円)の取引をこのネットワーク経由で実現している。なお、同電子商取引ネットワークを利用している大バイヤーであるシンガポール・テレコム社への納入企業から聞いたところ、ある日突然、シンガポール・テレコム社から、今後の機器調達はすべて「SESAMi.com」の電子商取引ネットワークを通じて実施すると言われ、否応無く対応しているとのことであった。バイヤー主体の電子商取引とは、このように否応無く発展していくものかもしれない。

 

東南アジアの代表的B2B企業「SESAMi.com」社の概要(ケース・スタディ)

<設立>

1999年9月1

 主な出資者は、NCS社(シンガポール・テレコム社の子会社)、OUB銀行、従業員持ち株、Eastman Chemical社。

<事業概要>

 B2B電子商取引に関するシステム・インテグレーション、ネットワーク提供、コンテンツ・マネジメント、データ・センターなどのすべての分野のサービスを実施している。1999年11月1日からは、シンガポール・テレコムのすべての調達を同社の「SESAMi」ネット経由で行っている。 

 2000年3月からは、Eastman社を中心に化学品の取引を開始している。

 SESAMiネットワークを通じる電子商取引の月商は5.5億シンガポール・ドル(約350億円)。顧客は現在1300社弱。1200社がサプライヤー。2万品目を取り扱っている。

<海外展開>

 全世界23の電子商取引ウエブのメンバーとなっている。インドに合弁企業、香港に100%子会社を設立している。現在、タイ、台湾、日本への事務所進出を計画中である。

今後の市場としては、台湾、中国、日本、豪州、ニュージーランドを狙っている。Commerce Oneのメンバーとなっている。

<提携関係>

・基本技術

基本システム:米国のCommerce One(e-Procurement)及びNescape(e-Direct)からの導入。

サーチエンジン:Lycosasia

ハードウエア:Compaq

・業務

コンサルティング関係:Pricewaterhouse Coopers

銀行決済関係:HDFC銀行、OUB銀行

ロジスティクス:Logistics

その他:ロゼッタ・ネットとの協力を検討中

<従業員規模及びデータ・センター>

 従業員は70名。シンガポール島内に1000平方フィートのデータ・センターを有している。24時間対応の7回線のHelpデスクと顧客サポート・サービスを行っている。

 

<ケーススタディ(2)>

B2Bの分野では、アジアに製造業分野で大きく展開している日系企業の動きに左右される。アジアでの日系製造業のプレゼンスは高い。アジアに展開している日系製造業は、家電を中心にアッセンブル型の事業形態であり、部品や部分品を外部から調達して、それを、自社工場で組み立てる形態の事業が多くなっている。事業コストに占める部品の外部調達比率は、2分の1をはるかに超えるほどの意外に思うほどの高率になっており、アジアに工場を展開している日系製造企業の調達額合計は膨大な金額となっている。今後、この外部調達コストを低減する観点からB2Bに大きな需要が出てくるであろう。

特に、日本のある大手家電企業では、Web電子商取引を全グループに展開するとともに、東南アジアの下請け企業1600社へも展開する計画を進めている。日本の家電大手の東南アジアでの調達の影響力には多大なものがあると思う。シンガポール、マレーシア、タイ、フィリピンなどを中心に予想以上のスピードで電子商取引は進展すると考えられる。この動きは、これまで情報化に遅れてきたアジアの中堅・中小企業に対し、大きなインパクトをもたらすと思われる。日系企業は、アジアでは巨大なバイヤーであり、この巨大なバイヤーが電子商取引の採用に動けば、アジアのB2B市場は花開くこととなるであろう。なお、電子商取引の発展と電子商取引企業の発展は、同義語ではない。将来の電子商取引ネットワークの機能を、ネットワーク企業が持つのか、バイヤー自身又はサプライヤーグループが持つのかは、今のところ見えてきていない。

 

<日米の電子商取引市場のアジアへの影響>

さて、次表は、1999年7月に日本の通産省とアンダーセンコンサルティングが共同で調査取りまとめた結果である。日本と米国の電子商取引市場の動向を比較している。例えば、日本のB-C市場は現在650億円である。( )内は、全取引に占める電子商取引の割合である。これは、002%。2003年には日本の電子商取引市場は70兆円を越えるというものである。

.  電子商取引市場の日米比較       (単位:兆円)

日本

米国

1998

2003

1998

2003

B to C

0.065

(0.02%)

3.16

(1%)

2.25

(0.4%)

21.32

(3.2%)

B to B

8.62

(1.5%)

68.4

(11.2%)

19.5

(2.5%)

165.3

(19.1%)

合計

8.69

71.56

21.75

186.62

出所:通産省・アンダーセンコンサルティング調査(1999.3)

   (  )内は、当該全取引に占める電子商取引の割合

 さて、前述の日本の電子商取引市場とアジアの同市場の将来予想を比較すると、いくつかのことがわかる。

 まず、日本と他のアジア諸国の電子商取引市場は、これから拡大していくであろう規模の大きさがケタが違うというものである。米国と日本の市場は格段に大きい。特に日本の伸び率が注目される。今後、3年間程度、世界でもっともエキサイチィングな市場は、日本ではないであろうか。今後、少なくとも、数年間のアジアの電子商取引は、何らかの意味で、日本を中心に動いていくと考えて間違いはない。

  例えば、この分野で技術をもったアジアの技術ベンチャー企業が、日本市場を対象に活動したり、日本市場を対象にアジア製品を販売したり、日本で発生した新しい技術をアジアに展開することが生じてこよう。

 

.電子商取引の推進のための政策枠組みの整備 

 

アジア各国のIT政策担当部局では、電子商取引の振興のためには法的環境整備が不可欠として、その整備に多大の努力を傾注している。この分野において、やや遅れ気味であった日本も「コンピュータ不正アクセス防止法」、「電子署名及び認証業務に関する法律」の成立により、体制が整ったといえる。電子商取引振興のための法制度整備の中核である電子署名に関しては、マレーシア、シンガポール、韓国、インド、香港が既に法律を整備しており、タイが国会審議中である。次表参照。

 各国の電子商取引関係法体系は、それぞれ異なるものの、共通的に次の事項が規定されている。

i)       電子媒体による文書及びデジタル署名に対し、これまでの紙ベースのものと同等の法的有効性を与えること。

ii)      不正にコンピュータにアクセスすることを犯罪とすること。

iii)    電子署名の認証局に関すること。

 

. アジア各国における電子商取引の推進のための政策枠組みの整備状況

国名

政策枠組みの整備状況

マレーシア

サイバー5法案成立(コンピュータ犯罪法、電子署名法、知的所有権法、遠隔医療法、通信・マルチメヂィア融合法)

2法案(電子政府法、データ保護法)が策定中

認証局事業者1社

シンガポール

電子商取引法・規則公布施行(1999年)

認証局事業者2社

タイ

2法案(電子商業取引法、電子資金移動法)が国会審議中

近日中に、ITインフラ開発法が国会提出予定